新潟県退職者連合 会長

早川 武男

 本欄に、携帯電話料金値下げ問題に関し10月1日に「魔訶不思議」と題して、また10月8日に「魔訶不思議・その2」を投稿した。情報労連やNTT労組の役員を退いてから約20年。いまの業界のことはよく分からない。頭も経年劣化しているが、菅首相の強権的なご発言に理不尽さを感じたことから想いの一端を述べた――大手3社とも民間企業である。ご発言は企業活動への政治介入にほかならないし、競争促進と政治介入は整合性がとれない。その上、膨大な投資によって裏打ちされた通信品質のことは言わない――。
 
 ところで、本欄を読んで下さった方から質問をいただいた。恥さらしを覚悟で、2020年3月時点の状況について申し述べたい。
 
 一つは、日本の料金は安いのか。今後さらに下がるのか。
 「魔訶不思議」では、経済ジャーナリスト町田徹さんの「すでに4割ほど下がっているが、向後1年~2年で猛烈に下がるだろう」とのご発言を紹介した。町田さんは日本経済新聞社出身で、かつて舌鋒鋭くNTT批判をされていた。だから「ドコモのまわし者」との、曲解の恐れがないことから氏の言を引用した。
 
 政府首脳の発言根拠と思われる総務省の調査は、東京、ニューヨーク、ロンドン、パリ、デュッセルドルフ、ソウルにおけるそれぞれの国の大手3~4社の携帯電話料金比較である。標準的な利用者(月2GB・ギガバイト~5GB。利用者の8割ほど)は、家族割などのサービス分を除いても、6都市比較では平均的な料金であり高くはない。ただし、月20GB以上(動画利用の多い方などが契約している。携帯会社も大容量は単価が高いことから誘導している感がある)は、ニューヨーク並みでヨーロッパ各国やソウルよりは割高である。私たち退職者連合の会員が、月20GB以上の大容量を必要とする方が多数おいでになるとは思えないが、それでも町田さんが言われるように今後急激に下がるのは、ほぼ間違いない。
 
 因みに、MVNO(いわゆる格安スマホ)は、2GB~5GB、20GB以上のいずれも東京が高い。
 
 二つ目は品質についてである。
 菅首相は事実を承知しているはずだが、解散・総選挙を意識し言及を避けている。狡猾と思うが彼の特徴でもある。
 
 「4G接続率」(4Gはいまの携帯。音声通話をかけ実際に通話ができたかどうか)は日本がトップ。韓国とアメリカも高いがヨーロッパ各国はやや低い。
「ダウンロード速度」も、日本は韓国とともに圧倒的に早く、アメリカやヨーロッパ各国はかなり遅い。
 
 品質について、ニューヨークやヨーロッパ各国は「安かろう悪かろう」とまでは言わないが、日本と比較すれば劣っている。日本の大手3社はサービス向上にむけて積極的な投資を行っているから品質は最高レベルにある。
 
 家庭支出にしめる携帯電話使用料の割合は高くなっているので料金値下げは歓迎だ。給付額が年々目減りしている年金生活者には有り難い――政府首脳のやり方は理不尽と思うが大手3社ともやるといっている。外野であれこれ言うこともないようだ――。
 
 そうそう、首相側近が「首相の狙いは国民の可処分所得の拡大」と言われていたが、そうであれば、最低賃金の引き上げや、年金、医療、介護など社会保障制度の劣化に歯止めをかける方が経済の乗数効果は高い。