村上地域退職者連合

長浜 武士

 村上市には三大祭(村上市7月、瀬波町9月、岩船町10月)があります。この三大祭のメインは、車切(しゃぎり)屋台(以下屋台と言う)の曳行にありますが、昨年、今年とコロナ禍のため残念ながら中止となりました。そこで、来年こそはの思いを込めて岩船大祭について少々紹介させて頂きます。
 
 岩船町には9町内にそれぞれ屋台がありますが、岩船大祭に初めて屋台が登場するのは元文四年(1739年)で今から300年も前になります。屋台は9台とも二輪二層造りで彫刻、漆、金箔が施され大変豪華な造りとなっています。一層には笛吹、大太鼓、め太鼓、乗り子(囃子)、二層には飾り物と見送りと言う美しい飾りが付きます。
 
 10月19日未明、三度目の先太鼓(触れ太鼓)が9町内に鳴り響きます。昔から『ヤレカガが来た』と言い、『さあ母さん達、起きて赤飯蒸かせ』と聞こえる『ヤレカガオギレ、オガママフカセ』が岩船大祭のスタートです。
満を持した9町内の若衆(近年は女性も含む)は代表者の掛け声のもと一斉に石船神社へと屋台を詰めます。神興渡御(みこしとぎょ)が終り、不動の1番屋台、明神丸を載せた岸見寺町屋台を先頭に9台の雅やかな屋台が連なり、年に一度の思いを込めて町内を練り歩きます。
 紅白の幕と門提灯を掲げた家々は無礼講で終日賑わいます。
『本日はおめでとうございます』と訪れる人には誰彼無しに御神酒を振舞うのも岩船大祭の魅力の一つです。
やがて夜を迎えた屋台には提灯が灯され、昼とは違ったムードと賑わいが町を盛り上げ『とも山』と言う行事で幕を閉じます。

*岩船大祭は1988年、新潟県無形民俗文化財に指定されました