昨年の9月26日、厚生労働省は全国1652の公立・公的病院のうち424の病院を、「再編・統合」が必要であるとして、該当する病院を名指しで発表した。

 名指しされた病院や、地域、自治体では、不満と不安が渦巻いた。後日、7つの病院が「再編・統合」から外され、新たに20の病院が追加された。7つの病院は公表されたが、20の病院は未公表である。

 新潟県では22病院が「再編等」が必要とされた。内、県立病院は7病院であった。全国1位の「再編・統合率」である。

 厚労省には、発表した後、各地域、団体等から抗議が集中し、弁解に奔走する事となった。しかし、弁解はするものの、「そのように進めて欲しい」ことを最後に言い渡し、全国で陳謝?しているようだ。

 なぜこの時期に発表したのか。厚労省は全国各地の、「地域医療構想会議」での議論が進んでいないため、議論を促進させるための策を講じたものだという。

 この「再編・統合」の基準があるが大変分かりにくいものという。また、机上で一律で検討したものという。基準の中で、心疾患・脳卒中・救急など9分野の高度医療について、「診療実績が乏しい」、という項目があるが、これは一定の期間(時期は不明)の調査である。

 「外された」7つの病院のうち2つの病院では、期間対象時は「施設の建て替え」が行われていたという。

 1つは社会福祉法人恩賜財団済生会支部東京都済生会中央病院(東京都)。最近では上皇様が入院された病院としてマスコミに登場した病院である。この病院は研修生(医師の卵)が一番行きたい研修先という。この病院が、「再編・統合」の対象になったのだ。
もう一つは熊本市立熊本市民病院(熊本県)。地震で被害を受け、建て替えしていたもの。

 本当に机上での作業だったのだと思う。また、「代替えする民間病院がある」という項目では、80㎞ 先の病院に到達する時間であるが1時間ということであった。高速なら理解できるが、普通の道路で80Kmは2時間以上かかるのではないか?

 また、医療関係者は言う。新潟で言えば、山間地の整形外科は、スキーシーズンが患者さんが多いとのこと。小児科は夏休み期間中に集中するとか。こういうことを、机上とはいえ、全国一律で物事を判断したり、地域の特殊性を無視したりの調査で、「再編・統合」などの判断をすること自体おかしいと思う。

 2月2日の新潟日報の紙面に、再編病院名公表不満63%と見出しがあった。
 新潟県内では、県と28市町村が不満と回答した。不満としなかったのは、三条市と長岡市だ。長岡市は公表された病院がなかった。三条市は「おおむね妥当」としたが、「地域の実情も考慮した上で具体の検討内容を示す必要がある」とした。

 公表の基準となった評価や分析方法についても、①地域の事情が考慮されていない。②選定基準に合理的かつ客観的な裏付けを見出すことができない。などの意見があった。

 地域医療の見直しを促す国の方針に対して、「賛成」は三条市だけであった。(新潟日報掲載)

 今回の公表は、公立・公的病院だけであるが、全国平均すると地域での病院の比率はおおむね、公立・公的病院が3割、民間病院が7割である。民間の病床を考慮せず、公立・公的3割だけで地域医療を考えるのはどうなのか?圧倒的な数の民間病院の病床数を減らさず、公的病院の病床数を減らすだけで地域医療を考えてよいものなのか、不思議だ。

 「公的病院をなくす方針」が見えてくる。こんな考えは私だけでしょうか?

文責 齋藤由宣