新潟県退職者連合 監査

中村 昇

(1) 新潟県労働金庫在職時の思い

  • 私は昭和43年に新潟県労働金庫に勤め始め、退職までの42年間ろうきん一筋で働いてきま した。その間、出身地の旧巻町や県央地域の各店舗をはじめ佐渡市、上越市、十日町市など県内各地を転勤で回る中で、それぞれの地域の良さを発見し、また、仕事柄、労働組合の役員の方々との関係を築く中で大いに勉強をさせていただきました。働く者の唯一の金融機関であるろうきんでは、企業利益の最大化のために働く民間企業と違って、働く者の福祉向上に関わる仕事ができたことを幸せに感じています。
  • 最後の約10年間は(財)新潟ろうきん福祉財団(当時は新潟県勤労者福祉厚生財団)で、ろうきんの本業とは離れ NPOや市民活動団体の活動を支える助成事業や、暮らし何でも相談、大学奨学金貸与事業、文化講演会開催などの事業を行っておりました。更に、任期中に公益法人改革の荒波にもまれ、やむなく一般財団法人への移行をすることとなり、結果として、県労福協とのコラボで実施している「ワーク&ライフフォーラム・セミナー」、「福祉リーダー塾」、「自立した持続可能な地域社会創造事業」、「高校奨学金給付事業」などのより広範な事業を推進する任務に携わることができ、ろうきんでは得られなかった貴重な体験となりました。

(2) にいがた協同ネットで学んだこと

  • にいがた協同ネットは2008年に新潟で開催された全国協同集会の実行委員会メンバーにより、新潟における様々な課題解決に向けた取り組みを考えるゆるやかなネットワークとしてスタートしました。
  • 現在の主なメンバーとしては、代表に渡邊登氏(新潟大学教授)、副代表に間英輔氏(県労福協専務)、高見優氏(ささえあい生協理事長)、斎藤弘明氏(ワーカーズコープ北陸信越本部長)、事務局長に江花和郎氏(元連合新潟会長・前労金理事長)、この他にも県内の学者、元県会議員や市議会議員など多彩な団体・個人により構成されています。
  • このネットワーク活動の中で課題として捉え、問題解決のため具体的に事業展開しているものとして、①パーソナル・サポートセンター(県労福協事業)、②フードバンクにいがたの設立などがあります。また、ネットワーク活動の大きな柱の一つでもありました「労働者協同組合法(略称:労協法)」が昨年12月4日に成立したことを受け、2年後の施行に向けた取り組みを本格化しています。
  • 原則として月1回の運営委員会では、年1回開催を計画している「にいがた協同集会」の開催準備や、構成メンバーからの情報提供などについて協議・検討を行っていますが、時には、時事問題に花が咲くことも多々あります。これまではネットワークの活動をサポートする任務に就い ておりましたが、参加者の知見の高さに刺激され、新たな発見をもらったり自分自身の生活の活力源となっています。
  • この中で、私が最近課題認識としているものに、生活基盤である地域には多くの課題が潜んでおり、これら課題解決に労協法を活かせないかという想いがあります。
    現在自治会の役員として地域と向き合っていますが、地域住民の関係性の希薄化が進んでいることや高齢者独居の増加に伴う買い物難民の問題など様々な課題が浮き彫りになっており、労協法による起業で地域を活性化させたいのです。

(3) 住みよい地域を創るために

  • 労働者団体の元リーダーは地域に目を向け地域デビューを果たそう
    • 我の現役時代を思い起こすと、職場では仕事人間で地域の活動やイベントは家族任せで見向きもしなかったという反省があります。組合員としては、賃上げや職場環境改善など組合員の活動は行ってきたものの、地域の生活環境の問題には無頓着すぎたと思います。ところが、現役を退いた仲間の中には知識や技術を持った人がたくさんおります。この力を地域に還元してみてはいかがでしょうか。
  • 社会をよくするために一肌脱ぎませんか

    • 地域に入り自治会の役員をしてみると地域の課題が見えてきますが、ここで地域目線で地域住民と一緒に課題に向き合って、具体的に行動してみると地域の人の見方が少しずつ変化してきます。それまでは近所の方と挨拶はかわすものの突っ込んだ会話をほとんどしたことがありませんでした。ましてや、自治会の役員会でも課題認識に対しての本気度があまり感じられなかったものです。
    • 私の自治会では、夏休み中のひとり親家庭の子供たちを応援する、労福協やフードバンク連絡協議会の呼びかけに対応すべく、回覧板でフードドライブを呼びかけようと役員会に提起し、短期間の取り組みであったのですが寄付金とお米などの食料品が集会所に持ち込まれました。これら物資を賛同団体であった労金巻支店経由で届けることができました。そしてこの成果を、早速、次の回覧板で報告しました。中には、フードドライブ設定日を過ぎても、私の自宅に寄付金や食料品、このほか衣服までも提供される方もおり、感激するとともに衣類は次の機会に届けることとしました。
    • 地域住民の私に対するこれまでの見方は、労金に勤めている人だから一般的な労働組合の人のように組合員の福祉向上のための活動に理解はあるものの、普段は地域にいないし地域課題にも関心を示さない人だなと思われていたものと思います。しかし、私たちは現在の政治が良くないと思っていても、仲間内だけで天下国家の話をしているだけでは決して良くならないと思いませんか。住みやすい地域をつくることなくして私たちの望む社会はできないのではないでしょうか。私たち労働者OB が地域に入り、地域で汗をかき、住みやすい地域づくりに参加することが社会を変える大きな一歩になると確信し始めています。人生100歳時代と言われていますが70代は鼻たれ小僧だと考えお互いの健康に留意しながら地域に目を向けひと汗かいてみようではありませんか。