新潟県退職者連合 副会長  

(JP労組新潟連協退職者の会)

 山田 太郎

 以下は、2019年5月17日に開催された県退職者連合第4回幹事会(合同)に配布されたフードバンク記事(中央労福協機関誌)の続編となるものです。従って、前段は少し重複する記述もありますがご了承ください。なお、原稿と関連した直近の新聞報道等を添付しました。

新聞記事1)(新聞記事2

                                       

 2012年度の内閣府(2013年度から厚労省に移管)の貧困対策モデル事業(民主党政権の“目玉事業”)として、パーソナル・サポート事業(生活困窮者自立促進支援事業)が新潟県で実施された。新潟県労福協にその事業が委託され(させた)、新潟・長岡・上越市の3地域を拠点に困窮者支援事業が展開されてきた。当時、相談者の中に、「3日間、何も食べていない、水しか飲んでいない」、と、その日の食べ物にも困っている人がおり、“米どころ新潟”で飯(メシ)が食えない人のいることが明らかとなった。

 最初は、その都度、サポートセンターの相談員が自前で食糧支援をしていたが対応し切れず、幾多の議論と思考錯誤の末、緊急的な食糧支援をするには、レトルト食品やカップ麺、パン、缶詰類など扱えるフードバンクが必要ではないか、という結論に達した。

 2013年、労福協の会員である「ワーカーズコープ北陸信越事業本部」、「ささえあい生協新潟」と「労福協」が呼びかけ人(団体)となり、“ヒト、モノ、カネ”など、事業の根幹ともいえる重要な資源が整わない中で「フードバンクにいがた」が“見切り発車的”に立ち上がった。

 こうした“寄せ集め的な集団”であったが、当時、フードバンクは時代のトレンドでもあり、テレビや新聞などマスコミに数多く取り上げられた。あれから7年、今年(2020年)2月~3月の間に県内5ヶ所の地域で新たにフードバンクが立ち上げられ、現在、県内10地域(村上・新発田・新潟・三条・見附・長岡・柏崎・五泉・加茂・上越)において、地域の特徴と自主性を生かしたフードバンク活動が展開されている。

 時あたかも、新型コロナウイルス感染の影響により、就労規制や解雇により収入が減る世帯、子どものいる困窮家庭などが大きな打撃を受けている。そして、生活困窮支援団体や県内のフードバンクへ食品の緊急支援を求めるSOSが急増するという深刻な状況が発生し、今もなお続いている。

 こうした状況の中で、緊急的ではあったが県内10地域で活動しているフードバンクが結集し、今年4月、「新潟県フードバンク連絡協議会」を結成した。この10団体が初めて連携する活動として、『新型コロナ緊急対策 子どもの未来応援プロジェクト』を立ち上げ、4月下旬に県庁内で記者会見した。この活動の概要は、経済的・社会的困窮により日常生活が失われている子育て家庭が急増する中で、特に頼り先の少ない一人親(母子)家庭を重点的に、とりあえず1週間分の食品を宅配により緊急支援するというものである。

 5月連休明けから始まったこのプロジェクトへは、県内各地から物心両面にわたる支援の輪が拡がり、主催者の推測をはるかに超える多くの食品と寄付金が寄せられている。 

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 コロナウイルスの影響はいつまで続くか、どこまで拡がるか誰も分らない。トンネルの出口が見えないどころか、また、いつ大規模な流行が起こるやも知れない。

 県内でも感染者やその家族に対する差別や医療従事者に対する偏見などが報告されている。いま県内の各地域では、生活困窮者、単身高齢者、障がい者、ひきこもり、震災避難者、ひとり親家庭など、様々な課題を抱えている人たちへ、官民の枠を超えた支援活動が行われている。

 コロナ禍により、「新しい生活様式」や「働き方の新たなスタイル」も定着しつつあるようだ。私たちのこれまでの価値観を根底から見直しせざるを得ない状況となっている。こうした状況であるがゆえに、改めて、これを機に行政や企業、地域市民と連携して、差別や偏見のない、社会が連帯して支える地域づくりをめざしていく必要がある。

 今回のプロジェクトは、緊急避難的な取り組みではあるが、本来、フードバンクや子ども食堂など、最も効果的にやれる主体は行政ではないだろうか。つまり政治による予算の優先順位、そのシステム変更ではないかと思える。併せて、そのような政策、制度課題を求めると同時に、今、地域で起きている問題に真っ向から向き合い、何ができるか、ひとり一人考えていくことが大切ではないかと思う。