真の文明とは・・
新潟県退職者連合 幹事 渡邉 五四六
150年ほど前のことである。
足尾の土地で鉱脈が発見された。足尾の地には、工場が建てられ、人口が増え、経済は発展し、足尾銅山は、東洋一と称される程に発展した。
その傍ら、樹木は枯死し、川魚は大量死し、住民の体調不良が頻発するようになった。鉱山に堆積されていた鉱毒は、洪水により田畑などあらゆるところに拡散された。
ところで、樹木の枯死・川魚の大量死などは、個別的に表れるとその原因は究明しにくい。ましてや、住民の体調不良などの症状は、個人の体質の問題として処理されやすい。足尾銅山下流、渡良瀬川沿線住民の健康が害されたと言う事実があっても、その真相究明は解決されず今日に至っているという。
以上は、足尾銅山鉱毒問題の講演を聞いた時の内容の一部であるが、今も頭に残っている。東洋一と称された文明は、住民の犠牲の上に代って立っていた。と私は解釈している。そして、住民を犠牲にした文明の発展は、今も延々と繰り返されている。
人がITを使いこなして、より高度な文明になるのか、ITが人を席巻し、ITが主役のより高度な文明か、などなどが巷間紙面に載る。
子育てをITに任せたら、その子供はだれを尊敬するのだろうか?
文明とは何か?足尾銅山鉱毒問題に一生を捧げた田中正造は
「真の文明は、山を荒らさず、川を荒らさず、村を破らず、人を殺さざるべし」
の言葉を残している。