新潟県退職者連合 顧問

早川 武男

 ガソリンや灯油のみならず小麦粉をはじめあまたの物価が上げっているが、命綱の年金受給額は僅かではあるものの減っている。2021年度は20年度と比べ0.1%、22年度は0.4%減る。23年度もスライド調整率の繰り越し分がマイナス3%あるので、現役世代の賃上げがこれまでどおりなら、楽観的にみても「ちょっとプラスかゼロ」だろう。

 年金制度は、現役世代の負担が過重にならないように「マクロ経済スライド」による自動的な給付抑制制度が導入され、かつ厚生年金の保険料率は18.3%に固定化された(本来は22.8%くらい必要だったのだが・・)。その上、マイナスが大きい場合は激変緩和のために発動を抑え、改定率がプラスになった年度に差し引く「繰り越し」が実施できるようになった反面、物価が上がっても年金は減ったり抑えられたりする。
 高齢者医療も窓口負担の2割化が進められ、介護にいたっては3年に1度の改定のたびに使い勝手が悪くなった。最大の要因は膨大な国の債務と世界に類を見ない高齢化の進展だ。
 しかし、この膨大な債務の処理方法や、人口構造の変化の中で年金・医療・介護・子育てといった社会保障制度をどう構築するのか、政府のスタンスは不明である。安倍政権時代に打ち出された「全世代型社会保障」の議論も牛歩遅々として進んでいない。
 
 経済アナリストで獨協大学教授の森永卓郎さんが、最近、新潟日報の経済私標で「政府の新型コロナウイルス感染症対策が緩い背景には国の緊縮財政があるからではないか。外出規制など強い対策をとれば、事業者や国民に大きな補償を出さざるを得なくなる。逆に緩い規制の結果多くの高齢者が命を落としても、それによって医療、介護の財政負担や年金給付が減り、財政や社会保障の収支はむしろ改善する」と述べられている。因みに、計算上は高齢者が1人亡くなると、国にとって200万円以上の負担軽減になるらしい。
 森永さんをめぐっては「学者必ず不人品」(学者は風采が上がらず一風変わった人が多いとの意)とでもいうか、独特のキャラから、ご主張に、眉に唾をつける人もおられるが実はけっこう当たっているそうだ。今回のご主張は〝まさか、そこまでは〟と思うが、政府は一刻も早くグランドデザインを示すことだ。