あゝ無情
~ミュージカルレミゼラブル開演によせて、もっと言えばほとんど趣味の世界~
林 光弘
♭~神様が罪を許して夢を叶えてくれると夢を見ていたの(夢やぶれて)♬~戦う者の歌が聴こえるか? 鼓動があのドラムと 響き合えば (民衆の歌)
ジャンバルジャンは飢えた妹のために一斤のパンを盗んだために獄に入れられる。病弱な妹の面倒をみるため脱獄を繰り返しながらも19年後出所した。彼に対する社会は冷たく、人間不信と社会への憎悪をますます増幅させる。教会の司祭は彼を温かく迎え入れたのだが銀の食器を盗んでしまい警察に逮捕される。司祭は彼に与えたものだ、と擁護し放免される。彼は心を打ち砕かれ慈悲を知り社会に尽くしていく。そう!ビクトルユーゴ―のレミゼラブルの始まり始まり!
正月にフジテレビでレミゼラブルを現代日本のドラマ仕立てでやっていた。私的には非常に不満やるかたなかった。原本では、法の正義を固く信じ、バルジャンを追い続ける警部ジャベールもまた主役で、まさに慈悲と正義のぶつかり合いがレミゼラブルのテーマの一つでもある。飢えた妹のためにパン一斤を盗んだ罪は何なのか。悲惨な生活を余儀なくされる人々(レミゼラブル)の慈悲を施すバルジャンの罪は何なのか。ジャベールは自問自答しやがて自死する。テレビでは、もちろんバルジャン(ディーンフジオカ)が主役なのだがジャベールのこの葛藤が薄すぎて納得いかなかったのだ。
主役に相対するアンチヒーローの描き方は、シャークスピアのベニスの商人にもみられる。人肉1ポンドを担保にする金貸しシャイロックもまた同じだ。極悪非道のこの男は最後に言う、ユダヤ人は血が流れていないのか、毒を盛っても死なないのか、迫害しても復讐できないのか、ユダヤ人だってキリスト教徒と同じ人間だ。善悪をひとつの見方だけに見ないこと、善であるものが他方にとっては悪であることもあり、相対的な見方をすることで、社会の倫理を問うているように思える。(は~、はー疲れてきた)ジャベールもシャイロックももっともっと論じられていいのだが・・・・。あゝ無情
いよいよ帝国劇場で濱田めぐみや知念里奈らによるレミゼラブルが開演する。