佐渡地域退職者連合 会長

永田 治人

 新型コロナウイルス感染症の位置づけが、いわゆる「2類相当」から「5類」に移行する変わり目のゴールデンウイーク。佐渡を訪れる観光客は全体としてコロナ前とまではいかなくとも、ここ数年より増加しました。佐渡の主な産業は農業・漁業と観光であり、特に最近下降気味にある観光を復活させるべくいろいろな取り組みがなされています。

 その中でも、「佐渡島の金山」をユネスコ世界遺産に登録させる運動は、何年も前から新潟県や佐渡市が力を入れてきました。世界遺産の意義からすれば観光客誘致ははずれているかもしれませんが、実際は大きな期待がこめられているのが実情です。ただ、マスコミで報道されているとおり、徴用工の問題を含めきわめて政治的な要素がからんで、先行きは不透明となっています。いま、日韓関係修復の行方が取りざたされ、登録に向けて期待の声が上がっている一方、尹政権への韓国国民の反応をみて慎重な見方をするむきもあります。

 この秋にイコモスからの調査が入ることになっていますが、その中には地元の熱意という項目があるそうです。私が見る限り観光業の方々を除くと、地元島民の関心がそう高くないという感じがします。何故かというと世界遺産に申請した中身を島民がよく知らない、また知ろうとしないということです。単純に考えると、地元から県、国へと順に推薦申請がなされるから地元がよく知らないということはないはずです。最初に地元で作成された申請の中身は途中で幾度か変更になりました。誰がどういう理由で変更したのかもはっきりしません。特に明治以降の近代の遺産をはずし、江戸期までに限定したことで、ライトアップされインスタ映えする「北沢浮遊選鉱場」など、テレビによく出てくる人気のあるところは対象外となりました。登録されるには対象を絞ったほうが良いという理由のようですが、明治以降の徴用工の問題を避けるためではないかという憶測もあります。島民はこのようなことをあまり知りません。

 推薦書の公開申請をしても、国は登録に支障があるからということで公開しません。県や市は国が公開しないものは公にはできないという姿勢です。

 人類共通の引き継いでいくべき普遍的な価値を持つ遺産について、駆け引きがあるから推薦書の内容を公にできないというのも何か変ですが、これが現実です。

 どこか間違いがあるかもしれませんが、私の個人的な感想です。