新潟県高等学校退職者の会
木村 昭雄
「八月のジャーナリズム」と揶揄されてもいる一つのメディアである地方紙紙面の「防衛元年」の四文字が眼に飛び込んできたとき、わたしのアタマに、「宮城遥拝」、「神州不滅」、「尽忠愛国」、「学徒出陣」「勤労動員」、「学童疎開」」などの四文字熟語が反射的に浮かんだが、四文字熟語は世情の危機化の前兆と、歴史探偵・半藤一利さんの教えに学んだ痕跡があったからにちがいない。
2023年が幕を開けると、「米、沖縄に離島即応部隊、海兵隊改編へ」(1月11日)、「馬毛島基地着工」(1月13日)と「日米同盟」強化へ向けての猛突進の見出しは、沖縄本島のみならず、離島をも囲い込んでの「琉球処分」ともいえる全島の「軍事基地要塞化」を想起させるが、「ここは、どこの国か?」、「アメリカの属州か?」の稚拙な疑問が消えず、「地図の上、黒々と墨を塗られつつ、幕が開くか・・」と慨嘆するのは、わたしの耄碌に因があるのか。
「世論工作、防衛省が研究、AI活用、反戦機運を払拭」(1月10日)の見出しは、治安維持法の復活が危惧される。「AI技術を使い、交流サイト(SNS)で国内世論を誘導」し、「有事で特定国への敵対心を醸成、国内の反戦・厭戦機運を払拭する」ことがネライと、『政府関係者からも「ソフトな思想統制につながりかねない」との批判もある』と解説記事にあるが、「戦争反対」、「沖縄から米軍基地撤去を」と口にしたり、書いたりすることがダメは、「呼吸をするな!」に等しく、「憲法違反」の暴挙だが、断行となれば、「世論工作」の対象優先は学校教育での主権者教育、国定教科書的な教科書検定への政治介入、そして「教え子を再び戦場に送るな」のスローガンを掲げる日教組へ・・・と向けられるにちがいない。
「新しい戦前」のことばを眼にする「防衛元年」。風化を危惧し、指弾する声もあるが、「教え子を再び戦場に送るな」を不忘の原初にし、「国民学校の朝が来る」芽を摘むことにつながるように、老境の身ながら非力を絞り、注ぎ、つながりとひろがりを求めていきたい。(2023.1.14)