新潟県退職者連合 顧問
早川 武男
先の第30回大会において、民間労組退職者会の代議員から「参院選において推せんした森さんが落選した。全野党が一つにまとまるように努力すべきだ。現役時代の所属労組の方針は『非自民・反共産』であったが今の時代、同じで良いのか」といった趣旨の発言があり、代議員席からは賛同の声があがった。
発言は、野党の現状に切歯扼腕する退職者の想いでもあり、賛同の声には「連合幹部はもっとしっかりしろ!」との意味も含まれているようだ。
「野党共闘」は政党と政治家の課題だが、2021年秋の総選挙以降、立憲民主党の「日本共産党の限定的な閣外からの協力」問題などが尾を引き、また国民民主党玉木代表の政権入りを望むような姿勢が影響し共闘の熱意は薄れている。そもそもリベラル野党が問われているのは「共闘」の是非ではなく、与党に対抗できる有力な選択肢として勤労国民に認められるかどうかである。「では代わりにあなた方がこの国を仕切れるのか」というところに国民の眼差しは向かっている。課題を見据え、勤労国民に語りかけることが重要だろう。
かつて安倍官邸は、国民の投票行動を「3割が保守、5割が無党派と棄権、2割がリベラル」であると分析し選挙戦を闘っていた。2000年代の各種選挙を検証すると、この割合は概ねあてはまる。広義な意味でのリベラルに日本共産党も入る。同党は野党共闘による政権交代を目標にすえるが、政権を担うための環境整備は進んでいるとは思えない。とりわけ、党名とともに日米安保条約と自衛隊の扱いが問題だ。安保も自衛隊も野党連合政権では認めると言っているが将来のことは分からない。これでは勤労国民の不安は払拭されない。仮に政権をとっても「閣内不一致」と攻め立てられ、即、おじゃんだ。
連合に結集する多くの労組の政治方針は「非自民・反共産」か「反自民・非共産」だ。
日米関係や自衛隊問題等々多くの政策が、連合方針あるいは産別の方針と合致しない。加えて彼らによる理不尽な労組・役員攻撃があったからだ。私が所属していた全電通労組(現NTT労組)は、組合民主主義に基づき決めた方針を幾度となく共産党から攻撃された。私自身も共産党支持組合員から、有ること無いことどころか、無いこと無いことまで批判された。理不尽な攻撃や批判は脳裏から消えない。
さはさりながら連合結成のさいの基本文書に「自民党に代わる新たな政治勢力の結集」が謳われ、山岸章会長をはじめ歴代会長はとことん努力された。5代目高木剛会長のバランスのとれた尽力がなければ民主党政権が樹立されたかどうかもわからない。けっして傍観視していたわけでない。新潟県もしかり、野党が連携できるよう県連合会長をはじめ幹部は尽力されてきた。時には理不尽な批判にも耐え大人の対応を貫いた。一寸したミスはあったかも知れないが、蛇が棒を飲んだような硬直的対応はみられない。
岸田政権は参院選を勝利し「黄金の3年」を手に入れたというが、日本経済の苦境は続き、円安も止まらず、国民生活の疲弊は一層ひどくなるとみられる。自民党最大派閥も早晩崩れていくことを考えると、次の解散総選挙は総裁任期満了前の2024年秋ごろと想定される。その約半年後には参議院選挙もある。立憲民主党と国民民主党の支持率向上と両党の融和が大命題だが、果たして2年ほどで民主党政権前夜のような雰囲気を醸成できるか。1回の敗北で県連代表の責から逃げるようなヤワなことをしている場合ではない。
言わずもがなのことであるが、政治は究極的には「数の力」だ。野党が真剣に政権を奪還しようと考えるなら、リベラル野党の連携は欠かせないと思う。しかし先の参議院選挙新潟選挙区でみられたように、自民党や財界、一部マスコミは野党の連携潰しに全精力をかたむける。それに対抗できるようにしなければならない。日本共産党からは、勤労国民がもつ根強い不安を払拭していただくことが必要だ。
いささか後ろ向きに映るような感想を述べたが、上杉治憲(後の鷹山)は自身の信念を、「為せば成る為さねば成らぬ何事も成らぬは人の為さぬなりけり」と披瀝した。気持ちは同じである。