新潟地域退職者連合 幹事

(新潟県労働金庫退職者の会 副会長)

 加賀 時夫

 今年の2月、小学6年生の孫から先生が、「学習参観におじぃーさんも来られないかなぁー」と言われたと聞かされた。私が行ったのでは孫は恥ずかしがるだろうと考え、孫に「お前は、どうして欲しい?」と聞き返したところ、孫も「来て欲しい」との返事だった。ならば、行かないという選択肢はなくなったのだが、息子・娘の学習参観にも一度も行ったことのない私であったので、孫の学習参観に行くことに不思議な気持ちになった。

 なぜ、先生が私のことを持ち出したかと言うと、学習参観の内容が「出会いにありがとう」をテーマに生徒一人一人が今まで出会った人で、自分の考え方や生き方、将来に向けて影響を与えてくれた人についての発表をするもので、私の孫が私たち祖父母を取り上げてくれたからだ。

 私たち夫婦の孫は、息子・娘を合わせて3人いるが、いずれも同居はしていない。しかし、息子・娘夫婦は共働きで、住まいが両方の家族とも私の家から2分とかからないところに暮らしている。当然か必然か孫3人の帰宅場所が両親の休み以外の日は我が家になってしまった。そんなことから2年前の退職を機会に孫の勉強の手伝いを始めた。6年生の孫が私の担当で、毎週提出する家庭学習に関する保護者のコメントは、私が書いていた。時折、私のコメントに対し、先生からも一言メッセージが添えられていた。そんなこともあってか、先生の冒頭の発言になったものと思っている。

 孫は、緊張しながらも立派なスピーチだった。孫のスピーチの内容に目頭を熱くしたが、他の生徒さんも素敵な内容だった。これまでの多くの方との出会いに、発表した生徒さんの想いを感じることが出来た。私にとっても貴重な時間となった。

 子供たちの人生の出会いを聞きながら、70歳を目前にした自分自身の出会いに想いをめぐらしてみた。やはり、数多く登場するのは、四十数年間勤めた労金での出会いである。労金が何たるかをわからずに入庫した私であったが、幸い、良き上司や先輩に恵まれ少しずつ成長することが出来た。

 そして、会員を担当する組織係になった時には、労働組合の役員の方々から育てていただいた。今でも強く印象に残っていることがある。当時は、預金運動が大きな取り組みで、夏冬とも会員の機関会議で取り組みの要請を行うのだが、労働組合の委員長から、「宜しくお願いしますと頭を下げるだけでいい。あとは任せろ。」と言われた。委員長の言葉通り、預金目標は超過達成だった。まだ、組織係として駆け出しの半人前ではあったが、その時の心強さは忘れられない。

 労金の良さは、まさに人との出会いだ。これまで数えきれないほどの出会いがあった。もちろん、小学6年生の子供たちのようにすべての出会いをバラ色とすることは出来ないが、圧倒的に素晴らしき出会いが多いことは間違いない。語り始めたらきりがない。だから、私は労金が好きだ。それは今も変わらない。

 労金を通しての出会いは、労金を退職した今も良き思い出として残っている。そして嬉しいのは、かつて出会った方々と再会した時のことだ。数年の年月が経っているにもかかわらず、応対も含めかつてのお互いの雰囲気に何の抵抗もなく戻れることだ。一昨年、労金から離れて半年が過ぎたころに、金庫から電話があった。労金退職者の会の副会長と新潟地域退職者連合の幹事を引き受けて欲しいとのことであった。労金から離れて、現役の時に出来なかった家庭を中心にした生活になじんでいたこともあって、要請をお断りした。

 しかし、金庫役員から重ねて要請を受けるに至り、逃げ道はないと就任を受諾した。その後、金庫を訪問した際に齋藤理事長と話す機会があった。齋藤理事長は連合新潟の会長時、私の最後の職場となった新潟労信協の理事長でもあった。その際、私は新潟労信協の事業運営に関し理事長としての具体的な対応をお願いしたのだが、私の考えを理解いただき全面的に協力していただいた。連合新潟の会長として忙しいことを承知のうえでお願いしたのだが快諾していただいたことは本当に嬉しかった。

 新潟労信協に少しは貢献できたと自負できるのは、齋藤理事長及び職員の皆さんのお陰だ。しばらくぶりの再会となったが、今回も当時と変わらぬ時間の共有が出来た。新潟地域退職者連合の幹事を引き受けたのも齋藤理事長の顔が浮かんだからに他ならない。

 また、新潟地域退職者連合の役員は、二瓶会長は私が東新潟支店長の時、真田副会長と土沼事務局長(※土に点が付きます)は山の下支店長の時、共に支店の運営メンバ―の方々であった。幹事として、十年以上経っての再会であったが、当時、私が感じていた人間関係にすんなりと入っていった。これも当時の出会いの良き縁と考えている。かつては、お願いすることが多い立場であったが、幹事として少しはお役に立てればと思っている。そんな気持ちにさせてくれるのは、当時の人間関係のなせる業だ。

 子供たちのようにはこれからが長くはないが、また新しい出会いもあるだろうし、かつて出会った人との再会も楽しみだ。多くの素晴らしい出会いを与えてくれた労金に感謝するとともに出会った方々に心から「ありがとう」と申し上げたい。

 さて、5月の投稿に間に合うように4月上旬に書いておいたのだが、5月中旬の今、世の中は新型コロナウィルスの感染拡大で憂鬱な日々が続いている。休校中の子供たちの新しい出会いのためにも一刻も早い終息を願わずにはいられない。