新潟県退職者連合 顧問

早川 武男

 漱石先生の『坊ちゃん』は「親譲りの無鉄砲」。私の場合ならさしずめ「親譲りの間抜け」か。最近、実に間抜けなことを繰り返す。

 1月下旬のどっこい甚句で「衆議院選挙での国民民主党の躍進は、『手取りを増やす』といった党の政策が、生活苦にさいなまれている多くの有権者の共感を呼んだからで、幹部の戦略の勝利である」と述べたものの、政策が抱えている課題などについて触れなかった。間抜けな人だ。

 ところで京大大学院の諸富 徹(もろとみ とおる)先生(財政学)が、1月31日のNHKラジオ『マイあさ』で、「103万円の壁」と「手取りを増やす」といった国民民主党の政策に関し、次のようなことを述べておられた。その要旨は

  1. 2018年の税改正で103万円の壁は取り除かれた。103万円を超えた分のみに課税されることから働いていた方が得だ(150万円までは配偶者控除と同じ額の配偶者特別控除もある)
  2. 確かに働き控えの人は多いが、それは企業がいまだに配偶者手当を103万円に紐づけているからだ。最近は働き手不足に悩む企業は従事者に税の趣旨などを説明している。手取りは減らないので就労が増えている
  3. 壁の引き上げで誰が得をするか。低所得者よりも高所得者が恩恵を受け、むしろ格差は拡大する。本来の目的とは違うことになる
  4. 低所得者にも恩恵を与えるなら「所得控除」より「税額控除」が望ましい。税額控除は一律の税額なら誰もが同じ金額が納税額から引かれる(2024年の定額減税がそうだ)
  5. 「103万円の壁」の打破はシンプルで分かり易いが、問題点も多いことから財源調達を含めもっと検討すべき

——である。ご指摘は傾聴に値すると思う。

 さはさりながら政治の世界では「手取りを増やす」3党協議が進んでいるようだ。でも赤字国債による措置は御免こうむりたい——近年の社会保障制度の改悪は「世界最高の借金財政」に起因している——。予算案の修正なら、高齢者に関わる社会保障制度が悪化することのないように対応願いたい。

 ※ カッコ内の小字のメモは早川による補足