新潟県退職者連合 顧問
早川 武男
東京都知事選で泡沫候補とみられていた石丸伸二さんに対する都民の熱狂や、再選は難しいと囁かれていた兵庫県知事選における齋藤元彦さんの当選は、若年層などのマスメディア・議会議員・高齢者など既得権益層に対する反乱とも言われる。
彼ら彼女らには、行政当局や議会議員はうまい汁を吸い、高齢者は、年金で言えば払った以上の額を受け取り、医療も現役世代に大きな負担を強いながら、自身の払いはごく僅かでしかないように映るらしい。齢とともに病院通いが多くなるのだが・・・。
都知事選や兵庫県知事選挙では、NHK党の立花孝志氏や、実業家ひろゆき氏などによるデマゴギーも影響を与えた―――彼ら彼女らは、立花氏の滅茶苦茶な言動、ひろゆき氏の詭弁を正論のように語るさまに疑問を持たないようだ。だいたい若者層の負担増について、ひろゆき氏は「高齢者が若者から搾取している」と言うが、近年の国民負担率の増加は、社会保障費の負担より市井の人々の税負担が増えたからだ。
東京や兵庫における世代間対立のような事態について、私にはよく分からないが、日本でも一部富裕層と市井の人々の間に所得格差が広がっているからかも知れない。
衆議院選挙における国民民主党の躍進は、「103万円の壁」解消と「手取りを増やす」政策を掲げ、SNSを駆使し若者層に働きかけ、これが生活苦にさいなまれている多くの有権者の共感を呼んだからだ。やはり国民負担率の増加や世の中の所得格差を意識し訴えたことが大きいし、若者を中心とした現役世代に焦点をあてた党幹部の戦略の勝利である。
だだ、これからの与野党議論では7兆円とも8兆円とも言われる財源を示して欲しい。
財務省は財政規律を錦の御旗に、自民党税調(インナー)を使い支出の抑制を画策するであろう。岸田政権で成立した「全世代型社会保障」は、幼児教育・保育や高等教育の無償化のため、目減りする年金で生活する高齢者にも負担を求め、一方、高齢者に関わる医療、介護などの水準を引き下げるというものだった。壁解消と手取りを増やす財源確保のため、同じようなスタンスに立たれたらたまらない。
私は高齢者の「応能負担」を否定するものではない。むしろ金融所得の大きい高齢高所得者からの再配分機能を高めるべきと思う。