「憲法9条を守ろう」

細谷 邦彦

 安倍首相は憲法記念日の5月3日「2020年を新しい憲法が施行される年にしたい」と述べ9条の1項・2項を残し、そのあとに自衛隊の存在を明記した条文の追加と、高等教育の無償化を定めた条文を新設するなどの改憲構想をビデオメッセージで一方的に発表した。安倍首相はその後の国会で『自民党総裁』としての考えは「読売新聞に書いてある。熟読して」と答弁したことに対して野党4党は「国会軽視」と強く反発した。

 安倍首相はまた党に対し、憲法9条に自衛隊を明記する改正など、自らの提案に沿った改憲の原案をまとめ党内議論の加速を指示した。安倍政権は、2014年安全保障関連法の制定に向け、それまでの解釈を閣議決定で一方的に変更し、歴代内閣が違憲としてきた集団的自衛権の行使容認に踏み込んだ。変えるものがあるとしたら憲法ではなく、この一方的な解釈変更であろう。

 今回の改憲構想には多くの疑問がある。なぜ2020年なのか、東京五輪とどう関係があるのか、民進党政権の教育無償化に反対した自民党がなぜ条文化するのか、法律で十分ではないか。9条の1・2項を残しそのあとに自衛隊を追加したのは明らかに矛盾である。2項を削除して「国防軍」とした自民党の改憲草案との整合性をどう図るのか。

 「安倍1強」のもと総裁選での3選を視野に「改憲勢力」に配慮し、そして自らの悲願でもある在任中の憲法改正に向け、衆参の3分の2の議席を背景に議論を加速させたい意図が読み取れる。そのためには今の衆院議員の任期中の来年12月までに発議する必要があるのであろう。憲法施行70年。戦後日本は一度も戦争をしていない。一人として殺していないし殺されてもいない。これは9条が武力行使に歯止めをかけてきたからである。

 今、平和国家として歩んできた日本は大きな岐路に立たされている。世論調査では憲法9条の改正には多くの人が反対している。

 戦後日本の平和主義を支えてきた9条を変えることなく次の世代に伝えていくのが我々の任務であると思っている。

 「世界に冠たる平和憲法9条」を守るため人々と時間をかけ、真剣な議論を十分行っていく必要がある。